「共有名義の不動産、共有者が認知症になったら売却できない?対処法を解説」

相続の基礎

「親が認知症になったら、土地が動かせなくなる」

相続について調べているときに専門家からこう言われました。
「共有名義のまま放置していると共有者の一人が認知症になった瞬間に土地が凍結されますよ」

凍結という言葉が私には刺さりました。
つまり動かせない資産になるということです。

固定資産税だけがかかり続け売ることも貸すこともできない状態になるのです。
「認知症になってからでは困る」ので必ず知っておく必要があります。

なぜ認知症になると売却できなくなるのか

不動産の売却は「法律行為」に該当するので法律行為を行うには「意思能力」が必要になります。
その理由は認知症が進んで意思能力を失った状態では売買契約を結ぶことができなくなるからです。

仮に署名・押印があったとしても意思能力がない状態での契約は法律上無効になります。
共有名義の不動産を全体として売却するには共有者全員の同意が必要です。
共有者の一人が認知症で意思能力がない場合、その人の同意を有効に得ることができないため土地全体を売ることができなくなってしまうのです。

対処法は3つ

①成年後見制度を使う

認知症の共有者に代わって法律行為を行う「成年後見人」を家庭裁判所に選任してもらう方法です。
成年後見人が認知症の共有者の代わりに売買契約に同意することで土地全体の売却が可能になります。

ただし注意点が複数あります。後見人の選任には通常3〜6ヶ月かかります。
後見人は家庭裁判所が選ぶため希望する人物が選ばれるとは限りません。
後見人は本人が死亡するまで原則として解任できず、月数万円の報酬が発生するケースがあります。

居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が別途必要で「売却のためだけに後見制度を使いたい」と思っても売却完了後も後見業務は続いてしまいます。
この点を十分に理解した上で判断することが必要になってきます。

②自分の持分だけを売却する

他の共有者の同意がなくても自分の持分だけを第三者に売却することは法律上可能になります。
認知症の共有者がいる場合でも自分の持分を売却して共有関係から離脱することができます。

ただし一般の不動産会社では「持分だけの売却」を扱いにくいケースが多くその場合は訳あり物件や共有持分を専門とする買取業者に相談するのが現実的です。

売却価格は土地全体を売る場合より低くなる傾向がありますが動かせない資産を現金化できるメリットの方が大きいと言えます。

③認知症になる前に共有状態を解消する

最も確実な対処法は共有者が認知症になる前に共有状態を解消しておくことです。

前に書いた記事「相続した土地が共有名義になっている?」で解説してますが全員同意での売却・代償分割・分筆など共有を解消する方法はいくつかあります。
「まだ大丈夫」と心に余裕があるうちに即行動することが最大のリスク回避になります。

任意後見制度という予防策もある

「まだ認知症ではないが将来が心配」という場合は「任意後見制度」という予防策があります。
これは本人に判断能力があるうちにあらかじめ信頼できる人を後見人として指定しておく制度です。

法定後見制度(認知症後に申立てる)とは異なり本人が後見人を選べる点がメリットと言えます。
ただし公正証書の作成が必要で費用もかかるので専門家(司法書士・弁護士)への相談が必要です。

兄弟間の共有名義は特に注意が必要

親との共有名義だけでなく兄弟間での共有名義でも同じ問題が起きる可能性があります。
兄弟の一人が認知症になった場合、その人の持分が動かせなくなります。

そしてその兄弟が亡くなってしまうと今度はその子ども(甥・姪)が共有者に加わりさらに複雑になってしまいます。
兄弟が揉める前にやっておくことについては「兄弟が揉める前にやること」も合わせて読んでみてください。

【まとめ】認知症になってからでは手遅れになる

・認知症で意思能力を失うと共有不動産全体の売却ができなくなる
・成年後見制度で売却できるが時間、費用、手間がかかる
・自分の持分だけなら認知症の共有者がいても売却可能
・最善策は認知症になる前に共有状態を解消しておくこと
・将来に備えるなら任意後見制度も選択肢のひとつ

共有名義は「今は便利」でも「将来は重荷」になりやすいと言えます。
認知症になってからでは打てる手が大幅に減るので早めに専門家に相談して共有状態の解消を検討することをおすすめします。

「共有名義のまま放置していたが認知症になってしまった」「自分の持分だけでも売却したい」そういった訳あり・複雑な案件でも専門の買取業者なら対応できるケースは多くあります。
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